No.35  ロン・カーター

細身で長身、かつ物静かでインテリジェンス漂う雰囲気、まさに我々がイメージするジャズ・ベーシストの風貌そのままを持つのがロン・カーターです。そして、彼は、ジャズにおける理想的なベースの役割を定義づけたイノヴェーターでもあります。
ロン・カーターは、1937年にミシガン州ファーデイルで生まれました。幼少からバッハなどのクラシック音楽に親しみ、10歳からチェロのレッスンを受けるようになります。その後、コントラバスに転向してクラシックの演奏家を目指します。ところが、オーケストラへの入団を試みるも、この時代にまだ根強くあった人種差別の壁により断念せざるを得なくなります。それならばと、ジャズの道を選び18歳頃からはローカル・バンドで演奏を始めます。
その後、ニューヨークに進出しイーストマン音楽院に入学。ここで学位を習得すると、次にマンハッタン音楽院で学び修士号を得ます。そして、1959年にドラマーのチコ・ハミルトンに認められ、彼のグループでプロ・デビューを果たします。ここで名を上げたカーターは、1960年からはソロに転じて、キャノンボール・アダレイやエリック・ドルフィーらビッグ・ネームと共演。そして、1963年にカーターにとってターニング・ポイントとなる大きなチャンスが訪れます。名手ポール・チェンバースの後釜となるベーシストを探していた帝王マイルス・デイヴィスから声が掛かるのです。
1963年にマイルスのバンドに加入。ここには、ウェイン・ショーター、ハービー・ハンコック、トニー・ウィリアムスというカーターと同世代の当時の若手気鋭が集結していました。この顔触れによる第二期マイルス・クインテットの演奏は、モード・ジャズの真髄を極め、“黄金のクインテット”と賞讃されます。カーターのモード手法に対応した的確な音選びと独創的なビート感覚によるプレイも高い評価を集めました。
この“黄金のカルテット”で最高水準のアコースティック・ジャズに到達したマイルスは、次にエレクトリックな方向へアプローチしていきます。カーターは、これを機にグループを脱退。1968年からはソロとして活動を始めます。以後、無数のセッションに参加するととともに多くのリーダー作を発表。1977年にはハービー・ハンコックが主導して“黄金のクインテット”再編を企画したニュー・ポート・ジャズ祭に参加。これがV.S.O.P.クインテットとなって世界ツアーにも出ます。
一方で1970年代中盤からはピッコロ・ベースというコントラバスより小振りで音域がやや高い楽器を開発し、自ら演奏するようになります。また、出自であるクラシックにアプローチしたアルバムも発表するなど、独創的な道を歩んでいきます。日本では1986年にウィスキーのCMに出演しお茶の間で顔馴染みとなり、近年も飲料系のテレビCMキャラクターに抜擢されるなど、最も身近なジャズメンの一人として現在も愛されています。

『G線上のアリア』
(EMI)

敬愛するバッハの作品に挑んだ1992年発表の意欲作。普段ジャズで使うピチカート奏法(指弾き)ではなく、アルコ奏法(弓弾き)中心にピッコロ・ベースも駆使するなど、チャレンジングな一枚。
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