No.25  チャールス・ミンガス

モダン・ジャズ期を代表するベーシストであり、優秀なコンポーザーであると同時に、“怒れるジャズマン”としてその名を知られるのがチャールス・ミンガスです。チャーリーの愛称で呼ばれることもあるミンガスですが、本人は「チャーリーと呼ぶな。チャールスと呼べ」と取材記者を相手に怒った、というエピソードも伝えられています。
1922年にアリゾナ州ノガルスで生まれたミンガスですが、5歳の頃にロサンゼルスのワッツ地区に家族で移住しています。6歳からトロンボーンを習得しますが、友人の薦めでチェロに転向。ロサンゼルス・ジュニア・フィルハーモニック・オーケストラのチェリストとして演奏するようになります。間もなくデューク・エリントンの演奏に衝撃を受けジャズに目覚め、ついにベースを手にします。同時にピアノと音楽理論も学び、1940年にはプロのジャズ・ベーシストとして活動を開始しています。ルイ・アームストロングやライオネル・ハンプトンといったビッグ・ネームのバンドに所属する機会にも恵まれ10年余り腕を磨いた後、1951年にニューヨークへ進出。最初は仕事も無く、一時的にジャズの道を諦めかけますが、あのチャーリー・パーカーのサポートなどもあって次第に波に乗っていきます。1952年にはドラマーのマックス・ローチと共同でデビュー・レコードを設立。このレーベルは3年ほどで消滅しますが、チャーリー・パーカー、ディジー・ガレスピー、バド・パウエルとミンガス、ローチからなる豪華クンイテットによるカナダのトロントでのライヴ盤『ジャズ・アット・マッセイ・ホール』など歴史的名盤も遺しています。1953年には憧れのデューク・エリントンのバンドにも一時在籍。そして、ここから全盛期へと向かっていきます。
1956年には人種差別への怒りを表明したアルバム『直立猿人』を発表し、シーンに衝撃を与えます。さらに、1959年の『ミンガス・アー・アム』では、白人と黒人の共学に反対するアーカンソー州知事を名指しで批判する<フォーバス知事の寓話>を発表し怒りをぶちまけました。一方でこのアルバムには後にジェフ・ベックやジョニ・ミッチェルを始め様々なアーティストによってカヴァーされた名曲<グッドバイ・ポーク・パイ・ハット>も収録され、ミンガスの作曲家としての評価も大いに高まっていきました。その後、好調は1960年代半ばまで続き、自身のヴォーカルやピアノをフィーチャーした作品も発表するなど、精力的に活動します。が、1960年代末から徐々に体調を崩し、1970年代の中盤に病気が悪化。車椅子生活を余儀なくされます。そして、1979年にメキシコで、筋萎縮側索硬化症、通称ルー・ゲーリック病が原因でその生涯を閉じました。ちょうどジョニ・ミッチェルがミンガス・ナンバーを取り上げたアルバム『ミンガス』を制作中でしたが、その完成を待たずに天に召されたのでした。彼の波瀾万丈の人生は自伝『負け犬の下で』にも綴られています。

『直立猿人』
(ワーナー)

人種差別の不条理を人類の進化から滅亡までに準えて訴えた、ジャズに文学的要素を取り入れた意欲作。音楽的には独特な黒さを持つストレートなハード・バップ。
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