No.20  スタン・ゲッツ

クール・ジャズの象徴、白人ハード・バップ・テナーの最高峰、世界的ボサノヴァ・ブームの立役者、と様々な称号が贈られる涼やかでしなやかなサックス奏者がスタン・ゲッツです。
1927年にフィラデルフィアで生まれ、13歳からサックスを手にします。才能はすぐに開花し、早くも16歳でプロの演奏家としてのキャリアをスタートさせます。まずはジャック・ティーガーデン楽団、そしてスタン・ケントン、ジミー・ドーシー、ベニー・グッドマンらの楽団を1~2年ごとに次々と渡り歩いて腕を磨いていきます。転機となったのは1947年に加入したウディ・ハーマンの楽団への参加でした。セカンド・ハードと名乗っていたこのビッグ・バンドは5人の白人サックス奏者によるアンサンブルを売り物にしていて、そこでのゲッツの流麗なテナー・プレイはたちまち評判を呼んだのでした。時はまさしくビバップ・ブーム絶頂期、攻撃的で野性味溢れるビバップへのアンチテーゼとして内省的で知的なジャズが求められていたのかもしれません。ゲッツの洗練され涼し気で透明感のあるプレイ・スタイルはそんなリスナーを刺激し、クール・ジャズという新たな潮流を生み出しました。その後、数年間でクール・ジャズのブームは収束しますが、そのテイストは西海岸の白人ジャズマンたちによってウエストコースト・ジャズに受け継がれていきます。
1951年には北欧にツアーで訪れ、同地に魅了され、後にスウェーデン人を妻に迎えてコペンハーゲンに移住し、北欧の民謡を題材にした音楽も制作します。一方で薬物中毒に悩まされ、モルヒネ欲しさに薬局に強盗に押し入り逮捕されるという事件を起こし、一時シーンから離れます。およそ2年間のブランクを経て1957年に欧州をベースに復帰、そして1961年にアメリカに戻るとゲッツは新しい音楽チャレンジを試みます。それがボサノヴァです。ブラジルでアントニオ・カルロス・ジョビン、ヴィニシウス・ヂ・モライス、ジョアン・ジルベルトによって生み出されて間もない当時のニュー・ウェイヴ・ポップにゲッツは早くも着目したのです。1962年にチャーリー・バードとのコンビでボサノヴァを取り入れたアルバム『ジャズ・サンバ』を発表。ジャズ・シーンにもボサノヴァ・ブームをもたらします。そして、その決定打となったのが翌年に発表した『ゲッツ/ジルベルト』です。ジョアン・ジルベルトとの共作で、アントニオ・カルロス・ジョビンをゲストに招いて制作されたこのアルバムは世界的なヒットを記録し、グラミー賞の4部門を受賞する評価を得ました。特にジョアンの妻だったアストラッド・ジルベルトが歌った<イパネマの娘>は今や不滅のスタンダードとなっています。この成功によってゲッツは以後、悠々自適な活動を続け、1970年代にはフュージョンにアプローチするなど、持ち前のしなやかさで時代の波を乗りこなしていきました。1991年に肝臓癌により永眠。

『ゲッツ/ジルベルト』
(ユニバーサル)

ジャズとボサノヴァが理想的な形で融合したジャズ・ボッサの歴史的名盤。ゲッツの奏でるクールな音色がボサノヴァのムードに絶妙にマッチ。
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