No.18 マーカス・ミラー
ジャズやフュージョンの分野に限らず、現在の音楽シーンで人気、実力ともに最高のベーシスト。そう断言できるのがマーカス・ミラーです。
1959年にニューヨークに生まれ、まずはクラリネット、次にサックス、そしてベースと、10代前半で様々な楽器を習得していきます。そして13歳の時には早くもR&B系の
セッション・ベーシストとして活動を始めたと言いますから、まさに早熟の天才です。ティーンの時代に音楽芸術学校とカレッジで正式な音楽教育を受けますが、同時にライヴやレコーディングでプロ・ミュージシャンとしての仕事も既に数多くこなしていきます。そして、20歳の時に、映画音楽家としても名高いキーボード奏者のデイヴ・グルーシンが設立したレーベル“GRP”のスタッフ・ミュージシャンとなり、さらに仕事は増えていきます。GRP以外からも依頼は殺到し、20歳そこそこでボブ・ジェームスやグローヴァー・ワシントンJr.、ロバータ・フラックにアレサ・フランクリンといった超大物の元でプレイするようになります。独特のスラップ奏法を中心とした超絶技巧のテクニックを誇りながら、決して出過ぎず、それでいてツボを押さえていて、さらに華があるというマーカスの演奏スタイルは様々なジャンルで重宝されたのです。日本でも同じ時期に渡辺貞夫や渡辺香津美がレコーディングに彼を起用しています。そんな中でも特に関わりが深かったのがデヴィッド・サンボーンとルーサー・ヴァンドロスで、彼らの作品にはプロデューサーとしても腕を揮うようになります。そして、1981年に6年余りのブランクから活動を再開したマイルス・デイヴィスのバンドに抜擢されたマーカスは、マイルスからもプロデュースを任されるのです。それが1986年のアルバム『TUTU』でした。
自身のアルバムは1980年代初頭に2枚。これは自らの歌も前面にフィーチャーした作品でした。1980年代後半にはレニー・ホワイトやバーナード・ライトといった出身地であるNYクイーンズはジャマイカ地区の幼馴染み達と組んだジャマイカ・ボーイズとしても2枚のアルバムを発表しています。1993年の『ザ・キング・イズ・ゴーン』以降はリーダー作をコンスタントに発表し、2001年の『M2~パワー・アンド・グレイス』ではグラミー賞も獲得しました。1997年にはエリック・クラプトン、ジョー・サンプル、スティーヴ・ガッド、デヴィッド・サンボーンとともにレジェンズを結成。大御所たちを束ねてヨーロッパ・ツアーを成功させた手腕も高く評価されました。
(ビクター)

ハービー・ハンコック、チャカ・カーン、そしてブラジルのジャヴァンなどゲストも多彩で豪華なグラミー受賞作。ベース・プレイも全開で硬軟両面が楽しめる一枚。