Vol.5  2011.8.2『子供達にJAZZを教える』

新作『AFTERSHOCK』は、9歳でトランペットを始めて、10代で早くも米軍キャンプやキャバレーで演奏するなど、およそ50年のキャリアを誇る日野皓正さんが「今回の作品は、どんなにすごいヤツに批判されても、“冗談じゃない。オレがやりたいと思ったんだからさ”と初めて言える作品」だと語る自信作。長いキャリアの中で、レコーディング後にこれほど繰り返し聴いた作品はないそうです。
何が彼にそう言わせるのか。制作を始める前に息子さんで、ベーシストである日野賢二さんに「今度オレ違うことをやるからさ。ヒップホップの感覚を取り入れてね」と語り、賢二さんの友人であるDJ hondaをゲストに迎えています。日野皓正さんがジャズミュージシャンではなく、DJと共演するのは初めてのこと。その成功に「人が駄作だと言っても構わない。とにかくこの作品が出来て嬉しい」と言う。
自分に厳しいアーティストがここまで語る作品について、ご本人のインタビューをもとにご紹介していきたいと思います。
「先生、演奏に命を張ることができました。なんて手紙をもらうと、涙が出ちゃうよね」

日野皓正さんは、世田谷区からの要請で、子供達にJAZZを教えるプログラムに協力をしています。楽器未経験の子供に演奏を教え、最終的には8月のコンサートを目標にしているそうです。最終的にはビッグバンドを結成することを目標にしているそうです。 今回は、子供達にJAZZを教えることの理由や意義についてうかがいましょう。


JJ:世田谷区のプログラムは、いつ頃から始められたのでしょうか。

「世田谷区のプログラムは、もう7年も続いている。最初の依頼は、子供達にビッグバンドを体験させたいというものだった。ということは、あまり上手な子供はいなくて、もしかしたら多くが初めて楽器を持つ初心者なのかもしれない。だったら、1回限りの関わりであれば、やっても成果が出ないだろう。そうであれば、やらないけれど、もし、一生続くのであれば、やってもいいよ、って返事をしたわけよ(笑)。そうしたら、区長が変わっても続けますと…。それが7年続いている」

JJ:具体的にはどういうプログラムなんでしょうか。

「8月のコンサートが最終目標。最初の頃は、ジャズなんて聴いたことがない子、親がオレのファンだということで送りこまれてきた子もいて、全然弾けないわけ。ギター担当の先生も「他の楽器はすでに2,3曲もやっているのに、ウチはまだ1曲目です。合同演奏なんてまだ無理です」と言ってきたりするけれど、子供の成長はすごく早いのよ。脳がフレキシブルだから、小学生なんて一番早い。じきに演奏出来るようになっちゃう。そうやって子供達が成長し、さらに巣立った生徒が今度はサポートスタッフになってイベントに関わって、小さい子の面倒を見たりしている。そういうリーダー的な存在の子供が育つのを見ているのも楽しいんだよね」

JJ:そういうところから未来のジャズミュージシャンが輩出されるといいですね。

「当然プロになりそうな子もいるわけよ。そういう子にはブルーノート東京に出演する時なんかは、“無料で入れてやるから、もし、ヤル気があるのなら訪ねてこい”と声を掛けると、嬉しそうに来るんだよね」

JJ:地方でも教えていらっしゃるそうですね。

「室蘭の廃校になる学校で、子供達と交流して、1曲を仕上げるというプロジェクトがあったね。NHKがドキュメンタリーでその模様を映像に収めたんだけれど、オレの『スティル・ビバップ』をやることにした。生徒には“おまえら、この中学校はなくなっちゃうけれど、ここの精神というものは次の学校に行った時も生かすんだ。心を忘れるな。オレもそういう気持ちでジャズをやってきた。『スティル・ビバップ』もそういう気持ちで書いた曲だ。一緒にこの曲をやろう”と呼びかけた。結構難しい曲なんだけれど、できちゃってね。練習中は、“コノヤロー、バカヤロー”を連呼して、“音に命を張れ”と叱咤した。最後のコンサートには残念ながら行けなかったけれど、後で子供達から手紙がきて、「日野先生が言っていた、命を張ることができました」って。感激だよね。手紙を読んで、涙が出てきちゃうわけよ。関わって本当に良かったって思えるわけよ」

“バカヤロー、コノヤロー”に愛情がこめられている。それを子供達はちゃんとわかっているから、一生懸命に取り組み、そして、手紙を送ってくれたのでしょう。日野さんの人間性が伝わるエピソードだと思います。次回は、ライヴ・レポートをお届けします。
日野皓正
『AFTERSHOCK』
ソニー・ミュージック・ジャパン・インターナショナル
好評発売中
【収録曲】
Inter Motion / Chip Talk / Aftershock / isn’t always / TKNYO2 / What Know / Jon Kyeong
【参加ミュージシャン】
(下記写真左から)日野賢二(eb) 小沼ようすけ(g) 石井彰(pf) 日野皓正 須川崇志(ab) DJ honda


◆ライヴ・スケジュール
7月25、26日 ブルーノート東京
http://www.bluenote.co.jp
◆オフィシャルサイト
http://www.sonymusic.co.jp/Music/Arch/SR/TerumasaHino/
バックナンバー
日野皓正


◇vol.4「絵を描く理由」→ (2011.07.26更新)
◇vol.3「今の心境」→ (2011.07.19更新)
◇vol.2「DJ hondaと初共演」→ (2011.07.12更新)
◇vol.1「9歳から始まったトランペッター人生」→ (2011.07.05更新)

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