【女性ジャズ・シンガー特集】vol. 2“ジャズは自由な音楽”それを謳歌する5人の若手シンガー
最近の若手女性ジャズ・シンガーは、才色兼備。ライヴで実力が認められて、アルバム・デビューとなり、日本でも注目を浴びている人が大勢いる。バックグラウンドは、それぞれ異なるが、共に作曲の才能に恵まれつつも、スタンダードにも真摯に取り組んでいる。そこにジャズの伝統にリスペクトする姿勢と、ヴォーカリストとしての魅力が大いに感じられる。そんな彼女達をご紹介しよう。
ソフィー・ミルマン/テイク・ラヴ・イージー
ロシアで生まれ、移住したイスラエルでジャズに出会い、エラ・フィッツジェラルドに夢中になり、現在穏やかな生活を求めて、再び移住したカナダで活動するソフィー・ミルマン。しっとりと歌うアルト・ヴォイスが魅力の本格派で、20代ながらパフォーマンスには風格さえ漂う。
そのソフィーにとってジャズとは、「ひとつの言語のような音楽。日本のように言葉が異なる国においても人々とジャズを通してコミュニケーションを図ることができる。同時に自由が認められている音楽なので、私の感情とか、人生の哲学を歌で表現することができる。この素晴らしさを知らない人から時々“なぜジャズのようなマイナーな音楽をやっているのか”と聞かれる。そういう問題じゃないの。ジャズには奥深い世界があるので、私は一生を通じてジャズとは何かを模索していくことになるんだと思う」と語る。
昨年発売された3rdアルバム『テイク・ラヴ・イージー』では『あなたに夢中』などのスタンダードに加えて、ジョニ・ミッチェルやブルース・スプリングスティーンらの曲をブルージーに歌っている。

『テイク・ラヴ・イージー』
ソフィー・ミルマン
(ビクター)
ヒラリー・コール/ユー・アー・ゼア~デュエッツ

『ユー・アー・ゼア~デュエット』
ヒラリー・コール
(ビクター)
ブロードウェイで活躍するシンガーを父に持ち、ピアノから歌に転向したヒラリー・コール。気品に満ちたヴォーカルで、父から仕込まれたクリアな発音で歌う歌は、軽快な曲であってもエレガント。美貌にも恵まれており、NYのジャズクラブで大人気を誇っていたが、親交のあるギタリスト&ヴォーカリストのジョン・ピザレリに勧められて、アルバム・デビューとなった。
そのデビュー作『魅せられし心』ではスタンダードを中心に歌っているが、彼女にとってスタンダードとは「俳優になったつもりで、歌の場面を演じるように歌う歌」だという。レパートリーも多く、今年発売された新作『ユー・アー・ゼア』もまたスタンダードを中心とした作品。しかも、サブタイトルに“デュエッツ”とついているように共演した相手は、ハンク・ジョーンズ、デイヴ・ブルーベック、ケニー・バロンといったジャズ界を代表するピアニスト達。ミシェル・ルグランの名曲『ハウ・ドゥ・ユー・キープ・ザ・ミュージック・プレイング』ではミシェル本人と共演するという豪華ぶり。どの曲でも愛を囁くような歌とピアノのデュエットを聴かせてくれる。
ヘイリー・ロレン/青い影
ヘイリー・ロレンのようなシンガーに会うと、声は神様のギフトだと思う。スキルは努力で磨ける。でも、聴いた瞬間に心とらえる声の魅力は天性のもの。しかも彼女はNYとかLAといった都会で歌っているのではなく、オレゴン州ユージーンという地方都市を拠点に活動し、デビューもインディーズから。
アメリカでの2ndアルバム『青い影』は、『サマータイム』や『枯葉』、『ゴッド・ブレス・ザ・チャイルド』などのスタンダードと共にプロコル・ハルムのヒット曲『青い影』を取り上げている。いずれも有名曲で、数えきれないほど大勢のアーティストが取り上げている曲だが、彼女は、艶やかさと爽やかさが共存したような魅惑的なヴォーカルで気負わず、自然体で歌っている。それがとても気持ちいい。
今年10月に新作がリリースされる予定。

『青い影』
ヘイリー・ロレン
(ビクター)
エスペランサ/チェンバー・ミュージック・ソサイエティ

『チェンバー・ミュージック・ソサイエティ』
エスペランサ
(ユニバーサル)
華奢な体で大きなアコースティック・ベースを大胆に演奏し、弾き語りも披露するエスペランサ。1984年生まれで、10月に26歳になる。アフリカ系とヒスパニック系の血を引き、美貌にも恵まれ、大きなアフロヘアがチャームポイント。バークリー音楽院でジャズを学んだ後、大勢のミュージシャンのバックバンドを経て、2008年にアルバム『エスペランサ』でソロデビューとなった。
その彼女の新作『チェンバー・ミュージック・ソサイエティ』は、優れたソングライターでもある彼女が書き下ろした新曲を中心とした構成で、タイトルどおり室内楽がコンセプトとなっており、チェロやヴァイオリンも参加している。実は、学生時代にジャズに転向するまではクラシックのヴァイオリンを学んでいたエスペランサ。新作にはその知識と経験が反映されているわけだが、特筆すべきはヴォーカルの使い方。ウィリアム・ブレイクのポエムを歌詞にした歌も歌うが、スキャット、ヴォーカリーズを駆使して、声をまるで楽器のように使っている。それが素晴らしい。また、ゲストの人選もさすがで、ブラジル出身のミルトン・ナシメントとデュエットしている。
エスペランサは東京JAZZで来日する予定。また来日メンバーと共に9月4日にブルーノート東京で公演を行うことになっている。詳しくは、RECOMMENDをチェックしてください。
ニッキー/ニッキー・デビュー~エラに捧げるスウィング
今年のバンクーバー五輪の開会式でカナダ国歌を歌った少女を覚えていらっしゃいますか? それがニッキーです。
現在は16歳だが、彼女が13歳の時にレコーディングしたのがこのライヴ・アルバム。サブタイトルにあるとおりエラ・フィッツジェラルドのナンバーをビッグバンドの演奏で堂々と歌っている。声は若々しいエネルギーに満ち溢れているが、歌の実力はとても13歳とは思えない。しかもライヴ収録なので、テクノロジーによる歌の調整は一切なし。
ニッキーにとってエラ・フィッツジェラルドは、初恋のような存在。エラの歌をCDで繰り返し聴くことで、独学で習得した。そんな彼女にとってジャズとは、「ポップソングだったら5分くらいで歌えるようになる。でも、ジャズだったらその倍はかかる。そのチャレンジが楽しい」と語る。また、「エラは、私をジャズの世界へ誘ってくれた存在。ライヴ盤はその感謝の気持ちを捧げたかった」というのがライヴ・アルバム制作の動機だ。
五輪後に発表したアルバム『ニッキー~フォー・アナザー・デイ』では自作曲も披露している。また、初の単独来日公演が決定している。
【日程】
10月4日 心斎橋クラブクアトロ
   5日 名古屋クラブクアトロ
   6日 東京国際フォーラム・ホールC
公演の詳細はこちら http://www.udo.co.jp/Artist/Nikki/
PAGE TOP↑




FEATURE
アーカイブス一覧
【TOKU 『DREAM A DREAM』】

【マリーン『マリーン・シングス・ドナ・サマー』】

【KEIKO LEE
新作『ケイコ・リー・シングス・スーパー・スタンダーズ2』】


【ライラ・ビアリの
“ミュージック・ジャーニー”】


【サリナ・ジョーンズ
『サリナ - ザ・ファースト・ライブ』】


【JUJU『DELICIOUS』】

【トニー・ベネット『デュエットII』】

【矢野顕子X上原ひろみ
”Recording LIVE IN TOKYO“】


【日野皓正インタビュー】

【マリーン インタビュー】

【TOKUインタビュー】

【鈴木重子インタビュー】

【ハクエイ・キム インタビュー】

【ケイコ・リー インタビュー】

【エスペランサ ライブレポート】

【キム・ホールヴェック】

【女性ジャズ・シンガー特集vol. 2
“ジャズは自由な音楽”】


【女性ジャズ・シンガー特集vol. 1
JAZZYな歌で心酔わせて】


【カルロス菅野インタビュー】